〈会員のオススメの一冊〉
生涯の伴侶~ヒルティ『幸福論』 伊東久雄
悩み多き思春期に出会ったのがこの一冊、確信に満ちた一句一句がどれほど私の脆弱な心を励ましただろうか。たとえば、「不幸は人間の生活につきものであり、逆説的にいえば不幸は幸福のために必要だ」「幸福を得るにはあらゆる人間の性質の中で勇気が最も必要」は六〇年後の今も深く心に刻まれている。この書は「毎朝最初の一番よい時間を新聞でつぶすのはその日一日の正しい仕事の興味を失わせる」というような「時間のつくり方」、「良習慣」の生活の知恵や、「人間と何かどこから来てどこへ行くのか」等の根源的問題を探求していて、岩波文庫で八五刷発行という人生論の古典です。
一九世紀後半のスイスに生きた著者の思想と生涯は深いキリスト教信仰に基づいている。彼に出会って聖書を読みだした私がその後の迷い多く危ない橋を渡ってこられたのも、自己を超える何かを信じてきたからかもしれない。この一冊は「生涯の伴侶」となった。 (二〇一一.八.九記)
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